天空の祭典からのメッセージ
大きく宣伝することもなく、毎回口コミで広がっていった『サンマリノ・ニッポンまつり』ですが、昨年の開催以降、駐日サンマリノ大使館や実行委員会への問い合わせが多く寄せられるようになりました。2018年に向けて真っ先に参加の手を挙げてくださったのは『輝環会(きわかい)』。表千家茶道家の速川祐永先生を中心に、27前から国際的な文化交流活動を続けてきたグループです。そこに和太鼓の『COHAN JUKU』が加わり、3回目にして、日本の古典文化の紹介を本格的に行う規模のものになりました。
そして、今年何よりも話題になったのは、京都佛立ミュージアムによる『トランクの中の日本』の写真展。この写真展の開催のために、サンマリノ共和国政府は、世界遺産である国会議事堂を会場に開放し、展示や宣伝に至るまで積極的に関わってくださいました。これにより、サンマリノ共和国政府とサンマリノ・ニッポンまつり実行委員会が、今後もしっかり手を組んで本格的に『サンマリノ・ニッポンまつり』に取り組む体制が確立されました。
写真展『トランクの中の日本〜戦争、平和、そして仏教』(6月29日〜7月30日)
『トランクの中の日本』は、終戦直後、原子爆弾が投下された広島、長崎を撮影したアメリカの従軍カメラマン、ジョー・オダネル氏が、想像を絶する悲惨さを目の当たりにした葛藤と共にトランクの中に封印していた写真を、43年後に、未だに戦争の耐えない世界に向けてという想いから、日本で出版した写真集です。本門佛立宗の長松清潤住職が館長を務める京都佛立ミュージアムでは、2015年に終戦70年特別展示として、『トランクの中の日本~戦争、平和、そして仏教~』を開催して、オダネル氏の心の変化を写真と共に表現した見事な展示として話題になりました。
そして今年の正月、その中の1枚の写真『焼き場に立つ少年』を、平和へのメセージとしてローマ法王フランシスコが、カードにして世界に配布するよう指示したことでヨーロッパ中に知れ渡り、日本でも大きく報道されました。
サンマリノ共和国は、世界最古の共和国でありながら、一度も戦争をしたことのない平和の国です。この写真展の開催をサンマリノの文化省に提案すると、この写真は戦争の愚かさや悲惨さを知るきっかけとなるものであり、世界平和を心から願う気持ちがここから広がれば……と、すぐに開催が決定。展示会場として、国会議事堂を貸していただけることになりました。
40枚のパネルを自力で持ち込み、サンマリノと日本が協力しあって作り上げた展示は、29日のテープカットの前に、サンマリノ共和国の代表である執政官2名が見学に来られ、サンマリノTVでも放映されるなど、大きな話題となりました。当初7月13日までの予定が、7月末まで延長されるなど、国内だけでなく、イタリアやヨーロッパ各地に広くアピール。サンマリノから始まり、今後も広がっていくことでしょう。
『輝環会』による文化交流(6月30日)
『輝環会』は、茶道の作法から着物の着付け、お琴の演奏、包丁式など、日本の本格的な古典文化を27年に渡って世界各国に伝えて来たグループです。女性を中心に全員和装でのおもてなしは、それだけで日本の心を伝えてくれます。
30日、サンマリノ神社の創建4周年記念式典の前、お昼からサンマリノ大学の講堂で行われたパフォーマンスでは、参加された方々に手際よくお抹茶を配り、飲み方まで指導。着物の着付けの説明や、お琴の演奏など、初めて見る海外の方々にとても喜ばれました。
サンマリノ神社創建4 周年記念式典(6月30日)
昨年まで午前中に行われていたサンマリノ神社での式典が、今年から17:00スタートになりました。サンマリノではまだ陽の高い時間ですが、ぶどう畑を渡って吹く風は、夕暮れの気配を含んでいて優しく、東京大神宮と戸越八幡神社の神職の方々により、式典は滞りなく行われました。自然、平和、自由そして友好の四重奏は、人種や文化は違っても心のあり方は同じであると、あらためて感じさせてくれます。
御諏訪太鼓の流れをくむ『COHAN JUKU』の和太鼓と、毎年恒例の、サンマリノ在住のヴァイオリニスト、矢谷明子女史の奉納演奏が青空に響き渡りました。
公式晩餐会・VIDEO MAPPING・提灯行列(6月30日)
公式晩餐会は『ニッポンまつり』のメインイベント。2016年に110席から始まったこのガラディナーも、今年は広場全体が250席で埋め尽くされました。今年は、和服の淑女たちとお琴の演奏でお客様をお出迎え。日本料理の名料理人、長島博氏が『輝環会』の一員として参加され、日本人でもなかなか見ることのできない『包丁式』の儀式を披露しました。
この長島氏が腕をふるった和食と、会場のレストラン『Righi』のサルティーニシェフのイタリアンとのコラボ料理は、テーブルの上を華やかに彩ります。海老しんじょとファゴッティーニが並ぶディナーは、他では考えられません。標高700mの広場で繰り広げられる『天空の晩餐会』の、これぞ醍醐味!
『COHAN JUKU』の、客席を巻き込んだ楽しい演奏の後、ディナーの最後に用意されたのは、サンマリノ大学の学生たちが制作した『ビデオ・マッピング』でした。投影するのは、まさに写真展が開催中の国会議事堂。サンマリノの歴史と、桜や龍、日本の文字を使った和文化を意識した映像に『焼き場に立つ少年』など、写真展の写真が込みこまれ、突然すくすくと伸びて実をつけた柿の木の映像が映し出されます。これは、長崎の原爆を生き延びた柿の木の種が世界中に配られたものなのだとか。この映像を作成するために、日本の歴史や文化に深く向かい合った学生たちの想いが、広場を取り囲んで見守る現地の方々を含めた、多くの参加者の心に響きました。
ビデオ・マッピングが終了して、時間は深夜11:00。それでも、提灯行列を待つ人の数は減ることがありません。今年も伊勢商工会議所ご協賛の提灯が200個、あっという間に無くなり、灯りが世界遺産の石畳の坂道や、石造りの建物を赤く浮き上がらせました。
JAPAN STAND〜食の文化交流・歓迎式典(7月1日)
『サンマリノ・ニッポンまつり』のもう一つの顔『JAPAN STAND』は、毎年レベルアップしています。パスタを焼きそばソースで炒めた『焼きパスタ』、かき氷は大人気。また、ドラえもんやキティちゃんのお面のは子供たちに大喜びでした。扇子やお面の販売は、写真展を主催した佛立ミュージアムの長松住職らが作務衣姿で張り切って販売してくださったお蔭で、列ができるほど。鰯やサバの缶詰め、冷たい緑茶もなども評判になりました。
夕方19:00からは、サンマリノの歓迎式典が始まり、中世の民族衣装に身を包んだ踊り手たちが、大きな身振りで踊ります。それに応えて、輝環会の方々が着物姿で盆踊りの輪を作り、周りで見ている人たちをどんどん環の中に誘っていきます。感謝状や記念品の交換の後、全員でのダンス! 賑やかなフィナーレとなりました。
2019年はサンマリノ神社も晴れて『創建5周年』を迎えます。既に参加したいという方々、晩餐会の料理を担当する名シェフ、世界が驚く素敵なパフォマーなどなど参加の声がたくさん上がっています。手作りでスタートした天空のフェスティバルは、大きな飛躍の時を迎えようとしているのかもしれません。
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